ファインレジンの架橋について |
架橋について
ファインレジンの特長の一つに、有機酸の存在下で熱処理すると、分子間で化学的架橋が起こります。このような特長は、他のどんなナイロンも持ち得ないものです。すなわち、ファインレジンは反応性ナイロンであるとも言えます。
本架橋により、分子同志が三次元の網目構造を形成し、熱可塑性を失います。また、アルコールに不溶となり、乾式及び湿式引張強度、引き裂き強度、耐熱性、耐薬品性が向上します。その一方で、水蒸気透過性、柔軟性は低下します。
架橋方法
ファインレジンのメタノール溶液中に、ファインレジンに対して3~5wt%の酸触媒を添加し、pHを4~4.5に調整します。上記溶液で加工後、70~80℃で予備乾燥して溶剤を揮散させた後、120~150℃で5~10分間、熱処理(キュアリング)すれば、架橋が起こります。また、ファインレジンは次のような処方で常温架橋させることもできます。
たとえば、ファインレジンFR-101 20g 、メタノール 80g、マレイン酸 0.2gでフィルムを作成し、60~70℃で乾燥すれば、10~15日で架橋熱処理したものとほぼ同等の特性を得ることが可能です。
架橋酸触媒
触媒による黄変について
ファインレジンの触媒の中には、高温・長時間の処理によって黄変することがあり、必要な場合、黄変のない触媒を使用する場合もあり得ます。触媒の黄変に関する試験結果を下記に示します。黄変が気になる場合は、グループ⑤又は⑥を使用することをお勧めします。
130~140℃で処理したとき:クエン酸、イタコン酸・・・・・フィルムが着色
・着色度により酸触媒をグループに分け、着色度の大きいものから挙げますと次のようになります。
① クエン酸 |
② イタコン酸 |
③ グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸 |
④ グルコール酸、マロン酸、クロトン酸 |
⑤ 乳酸、マレイン酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸 |
⑥ 次亜リン酸 |
・⑤は殆ど未着色、⑥は全く着色しません。
フィルム特性
フィルムの作成方法(例)
ファインレジンFR-101 15g、メタノール 85gの溶液に所定量の酸触媒を加えた溶液を、フッ素樹脂でコーティングされた枠内に流延、静置し、被膜が形成された後、約70~80℃で乾燥後、枠から剥がして架橋させます。
フィルムの試験方法
上記作成フィルムを3号ダンベルで打ち抜き、ショッパー型抗張力試験機で力学特性を評価します。
フィルムの力学特性
各触媒を使用し架橋したファインレジンフィルムの測定結果を下表に示します。
フィルムの水蒸気透過性及び吸湿性
ファインレジンフィルムは水を透過させませんが、高い水蒸気透過性及び吸湿性を持っています。
下記にファインレジンフィルム(架橋)及びその他フィルムとの比較表を示します。
下記にファインレジンフィルム(架橋)及びその他フィルムとの比較表を示します。
フィルム | 水蒸気透過性(g./sq.m.) 38℃、24hrs 90%/0% 湿度 (フィルム厚 0.025mm) |
ファイレジン FR-101 | 3,060 |
再生セルローズ | 3,800 |
ポリエチレン | 16 |
ポリエステル | 21 |